酒づくりは1年の中で春夏秋冬のサイクルの中、それぞれの季節に合わせた工程を経て、自然環境の力を利用して循環しています。
かつては春から秋の米作りを終えた農作業者が、お米を担いで蔵に入り、秋から春は蔵人として働いていました。
現在では蔵人は専業技術者として働いていますが、酒蔵のサイクルは昔通りの営みを続けています。
澄んだ水が越後湯沢の人々に涼をもたらす夏、酒蔵では新しい1年が始まります。
7月1日は酒蔵にとって新しい酒造年度の最初の日です。
蔵人が集まり、無事に1年を過ごしたことを感謝し、新しい1年への期待と決意を胸に、新しい酒づくりへの準備を始めます。
夏の日差しをたっぷりと浴びた稲が実り、首を下げる頃、農家と蔵人はその年の酒米の出来を気にし始めます。
そして収穫されたお米が酒づくりに適した精米歩合に精米され、酒蔵に運び込まれます。
酒蔵の高い煙突からお米を蒸す水蒸気が勢いよく天高く昇り、酒づくりの始まりを知らせます。
越後湯沢の冬は雪と共にあります。1月にはおよそ2-3mの雪が地表を覆い、一面の銀世界となります。
冬の湯沢の雪によって澄んだ空気と低い気温は、酒づくりの工程や発酵に理想的な条件を提供してくれます。いわゆる「寒造り」と呼ばれ、酒づくりは最盛期を迎えます。
5月、長い雪国の冬がようやく終わりを告げます。
田は雪解け水で充たされ、新しい田植えが始まります。
この時期、半年続いた仕込みもようやく終わりを迎え、「こしき倒し」と呼ばれる酒づくりの道具の後片付けの時期になります。
酒づくりが終わっても、酒蔵にはたくさんの仕事があります。
しかしこの時期は、蔵人にとっては次の酒造年度を待つ、つかの間のリラックスの時期でもあります。